通常、むし歯の治療等で歯を削る時、キーンという歯科特有の高温の金属音がする、エアータービンハンドピースという超高速の切削器具を使うのが一般的です。私は歯科大学の学生の頃より、この音が大嫌いでして、4年前に他界した父も同じ歯科医師として北海道の次に川崎市、そして現在の相模原市にて歯科医院を開業しておりましたので、私は幼少時よりこの音をずっと聞いて育ってきたわけで、慣れているはずなのですが他の歯科医師の先生に患者として治療を受ける際には今だに不快感と恐怖感は抜けません。 患者さんの皆様も大半の方はこの音は怖くてよい気持ちはしないと思います。
そこで、「5倍速マイクロモーター」といって、エアータービンとは別の切削器具を当院でも8年程前より導入しています。この器具は1分間の回転数が最大で4万回転で回る元の切削器具を5倍の20万回転まで回るように改良された切削器具でしてエアータービンは1分間の回転数が約38万~40万回転まで回りますが、約半分の回転数ですので切削力は劣りますが、切削音が静かで、エアータービンにくらべると振動の伝わり方がマイルドで患者さん側からはやさしい器具といえます。ほとんど歯の切削に関しては問題はありませんし、エアータービンより切削面がきれいという有利な面もございます。
だだしエアータービンを使う場合より、切削効率が悪く治療時間が長くかかるのが欠点です。また器具の手入れ、メインテナンスをしっかり行わないと故障が多いのも欠点といえ、ヨーロッパのメーカーが統一規格で主に生産している輸入品が多いため、価格も国産品にくらべると高価です。もちろん日本製の製品もあるのですが、自動車とは違ってやや耐久性や性能がドイツ製、スイス製などの製品より残念ながら今のところやや劣ります。
ドイツをはじめ欧米の国々ではこの器具がかなり普及して使われており、歯科用の診療台「ユニット」に通常付属している3種類の切削器具のうち、低速の通常のマイクロモーター1本、5倍速の高速マイクロモーター1本、エアータービン1本という仕様が主流となっており、タービンの使用頻度は激減しておりますが、日本ではなかなかまだ普及率が低いのが現状です。 タービンの使用頻度をなるべく減らした治療を心がけたいと考えております。